地域をフィールドにして学ぶ~高等部サービス班 1~
自立と社会参加を目指して
会津支援学校の高等部には木工班、農芸班、リサイクル班、手工芸班、陶芸班、クリーン班、サービス班の七つの作業班があります。
生徒たちは、作業学習をとおして、働く意義と自己の特性を理解し、将来の職業生活や自立と社会参加に向けて、協働の姿勢と責任感、主体的に働く力を身に付けることを目的として学習しています。
サービス班の活動
サービス班では、接客の技術やマナーについて学んでいます。
実践を通して、接客の技術を高め、毎年8月に開催される作業技能大会や、アビリンピックにも出場し、過去には県大会で3年連続金賞を受賞するなど好成績を残しています。
学びのフィールド
サービス班は令和4年度社会教育課事業「チャレンジ!子どもがふみだす体験活動応援事業」に「つながろう大熊と、広げよう私たちの絆~大熊の『友』と『共』に」というテーマでエントリーしました。
活動の目的
会津若松市で生活している大熊町の皆さんと交流し、大熊町や震災について理解したい。
会津若松市に住む同じ仲間として絆を深め、大熊町の皆さんに元気を届けたい。
サービス班で学んだ接客の技術をさらに高め、いろいろな活動にいかしたい。
働くために必要な力を身に付けて、自信をもって社会の一員として活躍できる人になりたい。
フィールド1「食堂カフェ ハレの日」
「株式会社ワンズホーム」の代表者の西本さん(大熊町出身)は、震災後の逆境の中でもたくましく立ち上がり、会津若松市で「食堂カフェハレの日」を経営しています。
西本さんや店長さんから、サービスの基本姿勢やホスピタリティ精神とともに、ふるさと大熊町への想い、震災後の復興にかける情熱について学ぶことにしました。
店長さんから、サービスの提供には「見返りを求めない『無償の愛』が大切である。」ことを教えていただきました。また、「他の人と違うことが価値になる。」「目標をもって取り組むことが大切である。」「他人のために自分ができることを考えて取り組んでいくことが自分の力になっていく。」ことを教えていただきました。
さらに、生徒達は「食堂カフェ ハレの日」で実際の接客技術を学びました。
店長さんにお客さんに満足してもらうための工夫を質問すると、こう答えてくれました。
「お客様がどれだけ喜んでくれているかを大切にしている。」
「また来たいと思っていただける接客を心がけている。」
「形のない接客は、型にはめずに、相手に合わせることが一番大切。」
実際に店長さんの理想とする接客を受けて、生徒達は接客で大事なポイントを、知識としてだけでなく、体験を通じた確かな手応えとして感じることができました。
フィールド2 大熊町
生徒達は、大熊町の震災の被害や会津若松市への避難状況、大熊町の文化や特産物、復興の様子を映像等を活用して学習しました。
震災が大熊町にもたらした影響について深く理解しました。
また、大熊町の方々の悲しみや喪失感、故郷への思いを自分自身に重ね合わせながら理解しました。
さらに、「おおくま町会津会」の方二名を講師としてお招きし、「大熊町の方の話を聞く会」を開催しました。
大熊町の概要や、避難一部解除の大熊町の様子、会津若松市での生活についてお話を聞きました。
おおくまベリーティー
大熊町の皆さんと親しく交流した後、生徒は「『食堂カフェ ハレの日』とコラボして、大熊町の特産物を使って何か作りたい。」「大熊町の皆さんに喜んでもらえる商品を作りたい。」という思いを強くしました。
そこで、「食堂カフェ ハレの日」と共同開発商品について話し合い、大熊町の新しい特産品である、「おおくまベリー」といういちごを使ったオリジナル紅茶「おおくまベリーティー」を作ることにしました。
「食堂カフェ ハレの日」と共同開発した「おおくまベリーティー」がこんなすてきなパッケージで完成しました!
原料のいちご「おおくまベリー」は、大熊町の「株式会社ネクサスファームおおくま」から、無償で提供していただきました。
サービス班と「食堂カフェ ハレの日」、そして大熊町の皆さんと協力して作った新商品です。
いろいろな方に試飲してもらいました
はじめに、学校の文化祭「パワー祭り」に来校した保護者に「おおくまベリーティー」を試飲してもらいました。
「食堂カフェ ハレの日」のお客様にも「おおくまベリーティー」を試飲していただきました。
試飲したお客様に、「いちごの香りがとてもいい。」「とってもおいしい。」と褒めていただきました。やったー、大成功!
大熊町の方々との交流会
「おおくま町会津会」の方々と、「食堂カフェ ハレの日」を経営する「株式会社ワンズホーム」の代表西本さん(大熊町出身)をお招きして、学校で交流会を実施しました。
『おおくま・おらほのカルタ』の制作経緯を聞いたり、カルタに登場する大熊町の騎馬隊や伝承館などについて教えていただきました。
大熊町が皆さんにとって、どんなに大切な故郷なのかさらに理解を深めることができました。
また、皆さんに『おおくまベリーティ―』を試飲していただくと、「おいしい。香りが良いね。」「いちごを使ってこんなにおいしい紅茶を作るなんて、すごいね。」などのうれしい感想も。
これまでの取り組みについて発表した後、『おおくまベリーティ―』をプレゼントして交流を深めることができました。
交流会に参加した方々からのメッセージ
生徒達もお世話になった方々にお礼状を送りました。
生徒達の感想
一緒に働く仲間として
活動する中で、「食堂カフェ ハレの日」の店長さんから生徒達はこう言われました。
「(同僚である本校の卒業生Aさんに対して、自分は)障がい者としてではなく、一緒に働く仲間として働いている。Aさんから私が学ぶこともたくさんある。(私は)そんなAさんと一緒に働くことができてとてもうれしい。」
これを聞いて生徒達は・・・
生徒たちの言葉
私たちのことを「仲間」として受け入れてくださっていることが本当にうれしかった。
私達には難しいこともたくさんある。
でも、今回の活動を通して、まっすぐで頑張り屋な私達だからこそ、できることもたくさんあるのだと、自信をもつことができた。
これからも、卒業までに働くために必要な力をしっかりと身につけて、地域や社会の方々に助けていただきながらも、自分らしく前向きに頑張っていこうと思う。
活動のまとめ
今回の活動を通して、生徒達は震災についての知識を身に付けるだけでなく、地域の方々との交流を通して、人々と触れ合うことやコミュニケーションをとることの喜びを感じることができました。
さらに、障がいのある自分たちも地域の一員として、できることがあることに気付くことができました。
また、自分たちが学んだ知識や技術が、地域とつながり共に生きていく上で有用な価値になることを理解し、自立と社会参加への意欲が高まりました。
そして何より、地域社会の一員としての所属感や連帯感を味わうまたとない機会になりました。
R4「ふくしまの未来」へつなぐ体験応援事業 成果発表
成果を動画にまとめ発表しました。
詳しくは会津支援学校のHPをご覧ください。